早稲田大學第17代総長 田中愛治 世界でかがやくWASEDAを目指して

早稲田大學政治経済學術院教授を務めた田中愛治氏が2018年11月5日、第17代総長に就任しました。
早稲田大學は今後どう変わっていくべきか、展望を聞きました。

必要になるのは、全関係者の〝覚悟?。

たなか?あいじ/1951年、東京都生まれ。1975年早稲田大學政治経済學部卒業。1985年オハイオ州立大學大學院修了、政治學博士(Ph.D.)。東洋英和女學院大學、青山學院大學、本學政治経済學術院教授などを経て現職。2006年から本學の教務部長、理事、および世界政治學會(IPSA)會長などを歴任。

総長として積極的に取り組みたい「Waseda Vision 150」の具體化

総長として、まず取り組むべき大きな仕事は、早稲田大學を「世界でかがやく大學」にしていくことです。そのためには、鎌田薫前総長の下で策定された「Waseda Vision 150(※)」を「NEXT STAGE」へと昇華させ、具體化を進めなければなりません。ただし、「Waseda Vision 150」では、研究?教育から組織運営まで、幅広い分野におけるこれからの早稲田大學の在り方を取り上げているので、取り組みが総花的にならないようにプライオリティーを明確にし、実効を上げる工夫が求められます。具體的には研究、教育、社會貢獻の順に取り組みを進めたいと考えています。

研究のレベルや教育の質をこれまで以上に高めるには、何といっても、より優れた人材を登用することが必要です。そこで、若手の研究者を、特に海外から積極的に招聘(しょうへい)したいと考えています。大學の教員は人材を育てることも仕事の一つですから、自分を超える研究者の登用に躊躇(ちゅうちょ)することがあってはなりません。私自身も日頃から、修士や博士課程で學ぶ學生諸君に「私を超えろ」と言い続けています。

教育の面では、カリキュラムの體系化を図ることが重要です。內容が重複しないように似通った科目を整理したり、科目を履修する順番を決めたりすることで、學生がより効果的に學ぶことができる體系を構築します。それによって教員の負擔も軽減できるはずです。

WAVOC(平山郁夫記念ボランティアセンター)の登録者が9,000人を超えているように、早稲田大學の學生はボランティアや社會貢獻への意識が高く、獨自の文化として根付いています。その文化をさらに広め、學生の「人間的力量」を高める後押しをすることが必要です。

そして、研究?教育?社會貢獻それぞれの取り組みをより効果的に進めるためには、國內外への広報活動と、予算の裏付けが欠かせません。研究や教育の成果などを英語だけでなく、中國語などでも海外に発信することによって、さらに優秀な研究者や學生を招くことにもつながります。また、予算については、海外からの寄付やファンドを募ることも検討する必要があるでしょう。

※ 2012年度に早稲田大學が掲げた中長期計畫

世界でかがやくWASEDAを目指して求められる「覚悟」と「思い」の共有

今年7月に行われた世界政治學會(IPSA)評議會で、新會長に選ばれたMarianne Kneuer氏(中央)、前會長Ilter Turan氏(右)と並ぶ元會長の田中総長

「Waseda Vision 150」の具體化に當たって心掛けたいのは、私たち教職員をはじめ、學生の保証人や校友までも含めた関係者全員が、「世界でかがやく大學」になるという「覚悟」を決め、その「思い」を共有することです。ハーバード大學のある教授によると、教授たちは普段バラバラの方向を向いていて、學長の演説といえども、あまり関心を示さないそうです。しかし、世界の優れた研究者をリクルートすること、優れた學生を選抜することには、一転して全員が時間とエネルギーを惜しまないそうです。ハーバード大學が世界を代表する大學であるのは、このような共通認識を関係者がしっかりと持ち続けているからにほかなりません。

もう一つ例を紹介しましょう。アメリカの大學が世界をリードする存在になったのは、1930年代に、當時はかなわなかったヨーロッパの有力大學に追い付くという覚悟を、アメリカの有力大學が決めたからです。アメリカでは、今では私たちも使っているシラバスや、大學院を出た若手研究者を雇用するテニュアトラック制度を導入したり、學生による授業評価制度を取り入れたりするなど、さまざまな新しい試みを行い、體系的な大學教育を進めた結果、70年代になってようやくヨーロッパに追い付くことができました。

早稲田大學を「世界でかがやく大學」に導くのは、関係する皆さんの覚悟であり、継続的な取り組みと努力です。より良い大學にするための方向性を私が示していきますので、ぜひ皆さんにご協力いただきたいです。

「たくましい知性」と「しなやかな感性」身に付けてほしい二つのこと

「世界でかがやく大學」に向かう中で、學生諸君には、「たくましい知性」と「しなやかな感性」を身に付けてほしいと考えています。大學入試の問題には必ず答えがありますが、世の中の問題は答えがあるとは限りませんし、そもそも何が問題なのか分からない問題すらあります。そうした難しい問題に立ち向かうことができるのが、「たくましい知性」です。問題の解決に向けて自分なりの答を仮説として立て、考察して検証する。課題を見つけて、また考える。そのような姿勢を身に付けてほしいと考えています。

また、大學入試のためには効率的な學習が重視されましたが、大學では、時には無駄な勉強をすることも必要です。その無駄が、いつかは無駄でなくなる時が來ることを忘れてはなりません。

「しなやかな感性」とは、ダイバーシティー、多様性を認めることといってもいいでしょう。早稲田大學では、性別、國籍、宗教や信條などに関係なく、誰もが平等に教え學んでいます。異なる価値観を持った教職員や學生たちと交わる中で、多様性を考え、認めて受け入れてほしいと思います。

さまざまな國籍の學生が學び、英語での授業も増えていますが、英語で學ぶだけでは、早稲田大學で學ぶ意味はありません。日本語と英語、日本人の學生と外國籍の學生が交流することによって、早稲田大學らしさが生まれ、真の國際化も図ることができるはずです。

そして學生諸君には、可能であれば、一度は海外に出掛けて、外から日本を見ることをすすめます。卒業後は國內で働くにしても、この情報化社會にあってはグローバルな視點が必要であり、グローバルな視點を獲得するには外から日本を知ることが重要だからです。

早稲田大學には、社會の役に立つために必要な知識?技能を、しっかりと身に付けたいという學生が少なくありません。そうした學生が學びやすい環境を、私たちは今後も整備していきます。

『早稲田學報』(2018年12月號)より
取材?文=牧浦豊
撮影=小泉賢一郎(2000年政治経済學部卒)

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